ベートーヴェンの音の仕組み「月光」Vol.2 ~「3つのソ」~

ベートーヴェンの音の仕組み「月光」Vol.2 ~「3つのソ」~

本ブログ「音の考察」について

ベートーヴェンという作曲家が生まれてから250年が経ちました。

2世紀半という長い月日が流れた現在においても、ベートーヴェンの音楽は色あせることなく、多くの人々の心を打ち続けています。

彼の音楽は時代と国を超えて、我々の心に何かしらのメッセージを訴えかけ続けているのだと思います。

ベートーヴェンはこれらの音楽をどのように作り上げてきたのでしょうか。

本ブログ「音の考察」では、主にベートヴェンの楽曲を用いて、ベートーヴェンが感情表現のために用いた「音で構築した仕組み」を紐解いていきたいと思います。

作品 ピアノソナタ第14番 作品27-2「月光」/ベートーヴェン

1801年、ベートーヴェンが31歳の時に作曲された3楽章構成のこの作品は、ベートーヴェンの楽曲の中でも最も有名な作品の一つです。

前回に引き続き第2回も、この「月光」を取り上げ、ベートーヴェンが自分の想いをこの曲に込めるために、どのような作曲のテクニックを使ったのか、紹介していきたいと思います。

まずはこの動画をご覧ください。

第1回でご紹介した鍵(キー)である「ソドミ」の上に、「ソ」の音が3回、重ねられています。

第1楽章の「ソドミ」の繰り返しでは、暗い闇から中々抜け出せない、そんな感覚を引き起こすような表現となっていました。

その「ソドミ」に「ソ」の音を3回加えることで、さらに暗闇が深くなっているように聴こえてこないでしょうか。

そうであるならば、この3つの「ソ」の音は、一体どのような機能・効果を持っているのでしょうか。

今回の鍵(キー)は、「3つのソ」

ここで「3つのソ」の機能を考える前に、今一度、第1回でご紹介した「ソドミ」の特徴に立ち返ってみましょう。

「ソドミ」は、低い「ソ」の音から高い「ミ」の音に向かって上行します。第1楽章では、その「ソドミ」を繰り返します。つまり、上行した結果、また低い「ソ」に戻ってしまうのです。上がろうとしても、また元の場所に引き戻されてしまいます。

今回取り上げる「3つのソ」の音は、この「ソドミ」に重ねられて演奏されます。


実際の楽譜を見てみましょう。(第5小節~)

「ソドミ」の「ソ」の音と、「3つのソ」の「ソ」の音、この2つの「ソ」が同時に奏でられます。そして、片方は「ド」、「ミ」と上がっていく一方で、もう片方はそのまま「ソ」の音で留まるような形で3回鳴らされます。

3回目の「ソ」の音を見てみましょう。これも「ソドミ」の「ソ」の音と同時に奏でられています。まるで「ソドミ」の音を「ソ」に押さえ込もうとしているかのようです。

2つ目の「ソ」はどうでしょうか。

この2つ目の「ソ」「ソドミ」のタイミングとズレが生じています。これはどのような効果があるのでしょうか。

実際に聴いてみるとわかるのですが、この「ソ」の音は単独で鳴らされますので、耳に残ります。この2つ目の音は「ソ」を強調するような効果があるのではないでしょうか。

最初と最後は上行する「ソドミ」の流れを意識し、2つ目であえて外すことでこの「ソ」を強調し引き戻す、そんな機能が、この「3つのソ」にはあるのだと思います。それが結果として、「ソドミ」の暗闇から抜け出せない様子を強調する、つまり、暗闇をより深くする効果に繋がっているのではないでしょうか。

ここで「ソ」の音は上行する「ソドミ」の一番底の音である「ソ」と同じである、と言う点がポイントです。「ソ」に引き戻すのですから、「ソ」でなくてはならないのです。

では、実際に「ソ」以外の音で同じ演奏をした場合、どのように聴こえるのか実験をしてみたいと思います。

いかがでしたでしょうか。

本来の「ソ」が暗闇を深くするように聴こえるのに対し、「ド」と「ミ」では暗闇の雰囲気を壊してしまうように感じないでしょうか。

この、3つの「ソ」と「ソドミ」の音型の組み合わせは、第1楽章では16回出てきます。ぜひ探してみてください。

実はこの3つの「ソ」と同じリズムが、第3楽章でも登場します。それがどんな役割を持っているかどうかは、また次回書きたいと思います。

ピアチャームの「音の考察」を最後までご覧いただき、ありがとうございました。


☆ブログの内容について転載、引用をご希望の方は、下記のメールアドレスまでご一報いただきたく存じます。

atelier@piacharm.com

音の考察カテゴリの最新記事